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そらいろスパ日和 宙のてのひら物語 Story 05

島の風に吹かれながら「気づく力」と「手のひら」の感性を育てていく、
新人セラピスト・宙の小さな成長物語。『そらいろスパ日和 〜宙のてのひら物語〜』がWEB上でスタート。忙しい毎日で少しだけ疲れた時に、そっと覗きにきてください。心も体も優しくほどけるような、そらいろの便りをお届けします。

Story05:白花色〜天果報の島へ

⸻ 小さな島の高台に建つスパ「エアリーリーフ」。 白い外壁と大きな窓、海からの風がやさしく吹き抜けるその場所に、 セラピストとして2年目を迎えた朝美 宙(あさみ そら)はいる。

宙は、てのひらに“やさしさ”を宿したいと願いながら、 ふんわりと笑う先輩・金城 光(きんじょう ひかり)とともに、 日々、お客様の心と体に向き合う時間を積み重ねている。

その中で生まれた「そらいろコース」は、仰向けと横向きだけで行う、新しいスタイルのトリートメント。 宙の気づきから生まれた、やさしさのかたち。 今日はそんな宙に、またひとつの“出会い”が訪れようとしていた。

⸻ 「ねぇ、宙ちゃん。 この“天果報(てんかふう)コース”で使ってるヤラブオイル、どこから来てるか知ってる?」 光さんが、施術後のティータイムにぽつりと聞いた。

「黒島ですか?」

「そうそう。 実はね、明日、お世話になってる生産者さんのとこに行くの。 タイミング合うなら、一緒に行ってみる?」

「行きたいです…!」

宙の返事はすぐだった。 ⸻ 翌朝、2人は港から小さな船に乗り、黒島へと向かった。 海を渡る風は少し強く、でも気持ちがよくて、宙は船の先端に立って空を見上げた。 (天果報…天の果報。  名前だけで、なんか心がふわっとあたたかくなるな…)

黒島は、牛の数が人より多いといわれる、ハート型をした小さな島。 観光地のにぎわいとは無縁で、のんびりとした時間が流れていた。 島の奥にある作業所で、宙ははじめて、オイルの生産者・りみねぇさんと出会った。

「このヤラブオイルね、テリハボクの木の実から絞ってるんだよ。 収穫は、島のおじぃやおばぁが手伝ってくれてるの。 みんなで自然を大事にしながらやってるよ。」 りみねぇさんの声は明るく、島の風のようにまっすぐだった。

作業場の裏手には、大きな木々と、熟した実が風にゆれているテリハボクの木があった。 宙はそっと手を伸ばして、その実を手のひらにのせてみた。 重たくはない。でも、どこか「命」を感じた。 「オイルって、こうやって人の手で、自然の中で、生まれてるんですね…」 つぶやく宙に、光さんが微笑んで言った。

「施術ってね、ただ触れることじゃないの。 素材の想い、関わる人たちの気持ちまで、まるごと届けるもの。 だからこそ、私たちは“受け取る感性”も大事にしなきゃいけないんだよ。」

宙はその言葉を、風の中でゆっくりと胸にしまった。 (このオイルは、自然と人と想いが繋がってるんだ。  “天果報”って、ほんとにその名前のままなんだな…)

⸻ 帰りの船の上。 潮風のなか、宙は空を見上げながら、てのひらをそっと開いた。 この手に、今、どんな想いが宿っているだろう。 このオイルと一緒に、どんなやさしさが届けられるだろう。 ——それを確かめる日は、もうすぐそこまで来ていた。

⸻ つづく。

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