島の風に吹かれながら「気づく力」と「手のひら」の感性を育てていく、
新人セラピスト・宙の小さな成長物語。『そらいろスパ日和 〜宙のてのひら物語〜』がWEB上でスタート。忙しい毎日で少しだけ疲れた時に、そっと覗きにきてください。心も体も優しくほどけるような、そらいろの便りをお届けします。
Story06:鶯色~てのひらの調べ ~ 天果報の香りとともに ~ ⸻
スパ「エアリーリーフ」の朝。 施術室に差し込むやわらかな光が、淡く揺れるスイトピーの花瓶を照らしていた。 宙は、施術前の準備をしながら、スマホの中にある1枚の写真をふと開いた。 それは黒島で撮った「夫婦ヤラブの木」。2本の木が、まるで寄り添うように並んで立っている── その姿に、宙は“やさしさ”のかたちを重ねていた。
(この木みたいに、寄り添って、ほどけて、癒される施術ができたらいいな…) 深呼吸をひとつ。 宙はやさしくお客様に声をかけ、施術がはじまった。
⸻ 今日のコースは「天果報(てぃんかふう)コース」。 使用するのは、黒島産のヤラブオイル。 ――世界では“タマヌオイル”と呼ばれ、「神の木の恵み」として知られる特別なオイル。 抗酸化力はエキストラバージンオリーブオイルの20倍以上。 その力は、肌を整えるだけでなく、紫外線からもやさしく守ってくれる。うぐいす色の命のオイルからは、ナッツのような香ばしさが漂う。
「日焼け止めとしても優秀で、化粧水の前のブースターとしても最高なんですよ」 と、宙は先日、光さんとの勉強会で再確認したばかりだった。 ただ――このオイルは、とても重いテクスチャー。 そして、30mlで4〜5千円するほどの高価な存在。 だから、宙たちはホホバオイルやピュアスイートアーモンドオイルと、 ていねいに2:1でブレンドして使用している。(ホホバは皮脂バランスを整えてくれて、アーモンドは保湿とやわらかさを届けてくれる… どれも、大切な“てのひらの仲間たち”なんだ) フェイシャルでは、もう少しだけヤラブを多めにして1:1に。 それでも、肌にのせるたび、自然の力が呼吸するのを感じる。
「……ふぅ」 仰向けに寝たお客様の呼吸が、ふと深くなる。 宙の手が、そっとその肩に触れた瞬間だった。 (届いてる。きっと、届いてる)
⸻ 施術が終わったあと。 お客様の表情は、施術前よりもずっとやわらかく、穏やかだった。 宙は、その手を見つめた。 黒島で見たヤラブの実。 そこに吹いていた風、育てていた人たち。 そして、夫婦ヤラブの木。 すべてが、今、ここに繋がっている。 ――このてのひらを通して。
⸻ 光さんが、そっと声をかけた。 「宙ちゃん、今日の手、あったかかったね」 宙は照れくさそうに笑いながら、小さくうなずいた。 この島に、風に、植物に、人に。 そして今日、手のひらに。 天からの果報が、ちゃんと降りてきていた。 ⸻ つづく。
補足:天からの恵み、地球からの贈りもの。 沖縄県では、ヤラブ(テリハボク)オイル=タマヌオイルを製造する事業所が増えており、自然の恵みを活かしたエシカルなビジネスとしても注目されています。 このオイルは、島の高齢者が収穫を手伝うなど、地域の人と自然が協力して生まれる“循環型の美容資源”。 さらに、抗酸化力はエキストラバージンオリーブオイルの20倍以上とも言われ、日焼け止め効果やスキンケア用途として世界的にも人気が高まっています。 Airy Spaでは、この希少で高価なオイルを、ホホバやスイートアーモンドと丁寧にブレンドし、 肌にやさしい形でトリートメントへと取り入れています。 「やさしさ」とは、単なる癒しではなく、自然・人・想いをつなぐこと。 そんな想いで、今日も私たちは“てのひら”を通して、物語をお届けしています。