島の風に吹かれながら「気づく力」と「手のひら」の感性を育てていく、
新人セラピスト・宙の小さな成長物語。『そらいろスパ日和 〜宙のてのひら物語〜』がWEB上でスタート。忙しい毎日で少しだけ疲れた時に、そっと覗きにきてください。心も体も優しくほどけるような、そらいろの便りをお届けします。
今日はいつも優しいまなざしで宙をみまもる先輩、光さんのエピソードです。
『そらいろスパ日和 宙のてのひら物語』Story11
「藍色 心に触れる手 」
──「ひかりさんは、どうしてセラピストになったんですか?」
宙の問いかけに、ひかりさんは静かに微笑んだ。
「まだ私が若かった頃、すごく辛いことがあってね。
落ち込んで、心も体もボロボロになってたときに、
仲の良い友達のエステティシャンが、黙ってフェイシャルをしてくれたの。」
「何も言わず、ただあたたかい手で、私の顔に触れ続けてくれてね。
気づいたら、涙がぽろぽろこぼれてた。止まらなくて……。
ずっと心に溜まってたものが、その優しさに溶けたんだと思う。」
宙はそっと息をのむ。
「そのとき、初めて思ったの。
“人の手って、こんなにも優しく心に届くんだ”って。
繊細になっている心には、言葉よりも、触れられる優しさの方が深く響くことがあるんだなぁって。」
「だからね、私も、そんな手になりたいと思ったの。
学びたい、誰かに届く手になりたいって。それが、私の始まりなの。」
ひかりは続ける。
「人の心って、生きていれば深海に沈むような時もあるじゃない?
でも、
言葉でなく、歌でもなく、本にもできない、そんな温かな力。それが触れる力。
派手な仕事ではないけど、宙ちゃんあなたの手に救われる人は必ずいるのよ。」
外では、藍色の風がそっと吹いていた。
今日もまたひとつ、心がほどけていく。
🌿
“触れる”ということは、
言葉よりも深く、心に届くものなんだ。
宙は光の言葉を、心の中で何度も何度も繰り返していた。
次回8/17更新